導入文
簿記や会計を学んでいると、
「自己宛為替手形」という名前だけで、思考停止してしまう方は少なくありません。
- 自己宛?
- 自己受?
- 為替?
……もうこの時点で拒否反応が出がちですが、ご安心ください。
実はこの手形、
考え方の軸を1本通すだけで、驚くほどシンプルになります。
この記事では、
- 自己宛為替手形の基本的な仕組み
- なぜ使われるのか
- 会計処理(仕訳)の考え方
- 混同しやすい自己受為替手形との違い
を、順序立てて解説します。
自己宛為替手形の全体像
通常の為替手形の仕組み
まずは基本形から確認しましょう。
通常の為替手形には、次の三者が登場します。
- 振出人:手形を振り出す人
- 名宛人(支払人):支払いを命じられる人
- 指図人(受取人):代金を受け取る人
構造は一言で言うと、
「AがBに命じて、Cに支払わせる」
という形です。
自己宛為替手形の特徴
ここで登場するのが、今回の主役です。
自己宛為替手形では、
- 振出人と名宛人が同一人物
になります。
本来は
「他人に支払わせる」ための為替手形を、
あえて
「自分が自分に支払わせる」形で使う。
この一点が、最大の特徴です。
その結果どうなるかというと──
実質的な性質は、約束手形と同じになります。
自己宛為替手形の定義と登場人物
自己宛為替手形の定義
自己宛為替手形とは、
振出人が自己を名宛人(支払人)として振り出した為替手形
のことです。
名前はややこしいですが、定義自体は非常にストレートです。
登場人物の整理
登場人物を整理すると、次の2者だけに集約できます。
- 振出人=名宛人(支払人)
手形を発行し、最終的に支払い義務を負う人 - 指図人(受取人)
手形を受け取り、支払いを請求できる人
ここでの最大のポイントは、
「最終的に誰が払うのか」です。
なぜ自己宛為替手形を使うのか
本店・支店間の送金
自己宛為替手形が使われる代表例が、
本店・支店間の資金移動です。
たとえば、
- 東京本店が振出人
- 同じ会社の地方支店を名宛人
とすることで、
同一会社内の送金を、手形という形式で整理できます。
形式は為替手形ですが、
実質は「自社で払う」ための手形です。
自己宛為替手形の仕訳
振出人(=名宛人)の仕訳
自己宛為替手形は、
約束手形を振り出したのと同じ性質を持ちます。
したがって、会計処理は
負債の増加として行います。
(借)買掛金 ×××
(貸)支払手形 ×××
指図人(受取人)の仕訳
一方、手形を受け取った側は、
通常の手形取引と同じ処理です。
(借)受取手形 ×××
(貸)売掛金 ×××
ここで特別な処理はありません。
覚え方のコツ
イメージで理解する
おすすめのイメージはこれです。
「自己宛=自分に請求書を出す」
- 自分宛てに
- 「後で払います」という手形を作り
- それを相手に渡している
結局、
最後にお金を払うのは自分。
だからこそ、
約束手形と同じ性質になるわけです。
まとめ
最後に、重要ポイントを整理します。
- 自己宛為替手形は、形式は為替手形・実質は約束手形
- 判断基準は常に
「誰が最終的に支払うか」 - 仕訳は
- 振出人:支払手形
- 受取人:受取手形
ここまで整理できれば、
試験問題でも実務でも、もう迷うことはありません。


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